ゆるく。それは生ぬるく聞こえるが、途轍もなく一途に、周辺にまとわりつく粘着思考を離れる考察態度を意味していた。外野の声を遮断して「考え続ける」価値を教えられた気がする。その意味では気易く「エッセイ集」と呼んでしまっては軽すぎるんじゃないかな。
2019年1月に発表された「悪と記念碑の問題」は著者の少年時代から連綿と続く関心事「政治や組織に力によって媒介され増幅される悪」について邪悪な歴史を伝える記念碑の意味とともに語る。記憶するために建てられる碑でありながら、建てて安心してさせてしまう忘却装置の役割も有するとの感想が開陳されて、ドキッとした。そこに政治的作為が見え隠れするなら尚更である。抽象化と数値化の暴力とも示される現実に、いままさにコロナ禍の政策報道を重ね見る。個々人の苦悩が見えなくされていく。日々の報道の洪水をまえにわたしは、「ゆるく」考えることを放棄してしまいそうになっている・・・・と教えて貰った。
最近の読書10冊(予定を含む)
- 迷子の魂(絵本)Olga Tokarczuk(作) Joanna Concejo(絵)
- 男らしさ(執筆)畑中章宏(『図書』岩波書店定期購読誌2020年12月号/らしさについて考える②)
- 杜甫の作った冷やし麺(執筆)興膳宏(『図書』岩波書店定期購読誌2020年12月号)
- 東洋堂古書目録 令和2年秋号
- しろいみつばち きくちちきの絵本(暮しの手帖Winter 2020-21 特別付録)
- 和歌史 なぜ千年を越えて続いたか(角川選書)
- おふろでちゃぷちゃぷ 松谷みよ子(文) 岩崎ちひろ(絵)
- 宮津昭彦集 自註現代俳句シリーズⅠ期16
- 永遠の緑 浅田次郎著 KEIBA CATALOG vol.18
- 英語発達小史(岩波文庫)H.ブラッドリ著 寺澤芳雄訳