帯の表紙部分にある武田砂鉄さんのコメントは絶妙。
ボクには理解できるよ、という傲慢な批評を、細かく切り刻む鋭利さに痺れた。
1990年代に生まれた写真の新潮流を、写真家業界のあっちとこっちの目線、さらにメディア目線まで丹念に「本音」を読み解いた怪著(であり快著だ)! はっきり言って、これは論文(あとがきによれば原型は修士論文だという、やっぱり)。400頁近くあって重いのに、表紙デザインといいイラストといい、その軽快さのお陰で手に取ろうという気になった。すばらしいお仕事です。原耕一さんと事務所TROUTのヒチローさん、せいさん。
それにつけても、写真家の男性天下世界を描き斬ってくれたことにより見えてくるのは、写真家だけの話じゃないってこと。ありとあらゆる職業ジャンルでこうした読み物が出尽くしてしまうくらい過激に叫べばいいのだ、われわれの国では。(そうそう変わるまいと諦めるまえに、できることはある。)
最後に、付け足しみたいではあるが、帯の裏表紙部分のコメントもイイぞ。写真に興味あるなしを問わず、女性にも女の子にも(この区別がいるかどうかは読み手次第)本書を読んで貰いたい表れと見た。
ガーリーってかわいいと思う?/ううん、めちゃくちゃ強くて/しなやかでカッコいい。/ほんとは知らなかった/たくさんのこと、/無かったことにされてきた/かつての女の子たちの抵抗と戦い、/今を生きる私たちにゆりえさんが/誇りと尊厳について/投げかけてくれる。/新しい時代の女の子革命のための/指南の書!/とにかくただただ話がしたい。/これから私たちが/どうやって生きるかについて。/太田莉菜
最近の読書10冊(予定を含む)
- 「おばさん」がいっぱい(執筆)三辺律子(『図書』岩波書店定期購読誌2021年4月号/本をひらいた時)
- 七万人のアッシリア人 ウイリアム・サローヤン(著)斉藤数衛(訳)現代アメリカ作家集上巻所収1971年初版
- 季(とき)間中ケイ子(筆)ほか/日本児童文学2021年3・4月号 特集25年後の子どもたちへ
- カフカらしくないカフカ 明星聖子(著)
- 雪の練習生 多和田葉子(著)
- 物理の館物語(著者不明)/小川洋子『物理の館物語』参照(柴田元幸編『短篇集』所収)
- 『還れぬ家』『空にみずうみ』佐伯一麦(著)
- 十一年目の枇杷(執筆)佐伯一麦(『図書』岩波書店定期購読誌2021年3月号/巻頭)
- もっともらしさ(執筆)畑中章宏(『図書』岩波書店定期購読誌2021年3月号/らしさについて考える④)
- 【続】フランツ・ファノン『黒い皮膚・白い化面』小野正嗣(筆)NHK100分de名著