帯の表紙部分にある武田砂鉄さんのコメントは絶妙。
ボクには理解できるよ、という傲慢な批評を、細かく切り刻む鋭利さに痺れた。
1990年代に生まれた写真の新潮流を、写真家業界のあっちとこっちの目線、さらにメディア目線まで丹念に「本音」を読み解いた怪著(であり快著だ)! はっきり言って、これは論文(あとがきによれば原型は修士論文だという、やっぱり)。400頁近くあって重いのに、表紙デザインといいイラストといい、その軽快さのお陰で手に取ろうという気になった。すばらしいお仕事です。原耕一さんと事務所TROUTのヒチローさん、せいさん。
それにつけても、写真家の男性天下世界を描き斬ってくれたことにより見えてくるのは、写真家だけの話じゃないってこと。ありとあらゆる職業ジャンルでこうした読み物が出尽くしてしまうくらい過激に叫べばいいのだ、われわれの国では。(そうそう変わるまいと諦めるまえに、できることはある。)
最後に、付け足しみたいではあるが、帯の裏表紙部分のコメントもイイぞ。写真に興味あるなしを問わず、女性にも女の子にも(この区別がいるかどうかは読み手次第)本書を読んで貰いたい表れと見た。
ガーリーってかわいいと思う?/ううん、めちゃくちゃ強くて/しなやかでカッコいい。/ほんとは知らなかった/たくさんのこと、/無かったことにされてきた/かつての女の子たちの抵抗と戦い、/今を生きる私たちにゆりえさんが/誇りと尊厳について/投げかけてくれる。/新しい時代の女の子革命のための/指南の書!/とにかくただただ話がしたい。/これから私たちが/どうやって生きるかについて。/太田莉菜
最近の読書10冊(予定を含む)
- 春の宵(著)クォン・ヨソン(訳)橋本智保/韓国女性文学シリーズ4
- アジの味(著)クォン・ヨソン(訳)斎藤真理子(頭木弘樹編『絶望書店』所収)
- ゆるく考える(著)東浩紀 (河出文庫)
- 他所者の神戸(執筆)尾原宏之(『図書』岩波書店定期購読誌2021年6月号)
- 実力も運のうち 能力主義は正義か? マイケル・サンデル(著)鬼澤忍(訳)
- 「僕ら」の「女の子写真」から わたしたちのガーリーフォトへ 長島有里枝(著)
- 未確認ハンバーグ弁当(作)日向理恵子/日本児童文学2021年5・6月号
- 雲と空のはざまで(執筆)大河原 愛(『図書』岩波書店定期購読誌2021年5月号/巻頭)
- お探し物は図書室まで 青山美智子(著)さくだゆうこ(羊毛フェルト)写真(小嶋淑子)装丁(須田杏菜)
- 三の隣は五号室 長嶋有(著)中公文庫