東日本大震災から10年という話題をかくも見事に終戦直後日本の復興と重ね合わせた文章は、初めて目にした。奇を衒うことなく、「枇杷」を機縁としたリアルな実感が伝わってくる。さすが多年の作家人生のなかでも宮城県人とし大震災を扱う作品を発表してこられた筆者の、年輪の深さがおのずから滲んでいる。
震災によって喪われたものが数多くあるなかで、震災後の歳月の中でしっかりと育ったものがある。
こんなふうに、大震災前年に植えた枇杷の種(今は若木)にことよせて、同郷の歌人佐藤佐太郎が敗戦後の東京で読んだ秀歌を紹介して結んでいる。
苦しみて生きつつをれば枇杷の花終りて冬の後半となる
佐藤佐太郎・詠
最近の読書10冊(予定を含む)
- 迷子の魂(絵本)Olga Tokarczuk(作) Joanna Concejo(絵)
- 男らしさ(執筆)畑中章宏(『図書』岩波書店定期購読誌2020年12月号/らしさについて考える②)
- 杜甫の作った冷やし麺(執筆)興膳宏(『図書』岩波書店定期購読誌2020年12月号)
- 東洋堂古書目録 令和2年秋号
- しろいみつばち きくちちきの絵本(暮しの手帖Winter 2020-21 特別付録)
- 和歌史 なぜ千年を越えて続いたか(角川選書)
- おふろでちゃぷちゃぷ 松谷みよ子(文) 岩崎ちひろ(絵)
- 宮津昭彦集 自註現代俳句シリーズⅠ期16
- 永遠の緑 浅田次郎著 KEIBA CATALOG vol.18
- 英語発達小史(岩波文庫)H.ブラッドリ著 寺澤芳雄訳