短編ならではの、日本的な空白の美学と感歎するばかり。主人公のうら若い武家妻・野江の不遇にふと訪れた微かな恋心は、不倫といってしまえばそれまでだけれど、そんな俗語で穢してほしくない救済の希望を纏いながら彼女を突きうごかしてゆく。で、どうなるの、というところは状況も周辺人物の思いも全く描かれることなく、読者の夢想に委ねられる。
やっぱり渋くて巧いなあ、藤沢先生は。
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