エドワード・ホッパーの絵だから成り立つ企画にちがいない、と妙に確信してしまう。彼の画たちを題材にした短編小説アンソロジーのなかでも、とってもユニークな「ピエロが客として真ん中にいるレストラン」の絵がどんな物語に仕上がったのかわくわくしながら読む。ピエロはパントマイムさながら黙したまま、別の人間の視点ではじまる描写。画中の人物が生き生きとしている。もちろん、ピエロの役割は小さくなくて、遠い過去の物語までもが引き出されてくる、そんな宵の物語。ごちそうさまでした。
あとから知ったことだが、エドワード・ホッパーの作品がコロナ禍の米国で昨年注目されていたという。ピエロのいる絵はそうでもないが、他の多くは独り佇む構図で、コロナ禍の風景と重ねて賞翫されたらしい。そんなわけで急遽この企画が、というわけではあるまいが、時代が、彼の絵を欲しているということなのだろう。
最近の読書10冊(願望を含む)
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- アジの味(著)クォン・ヨソン(訳)斎藤真理子(頭木弘樹編『絶望書店』所収)
- ゆるく考える(著)東浩紀 (河出文庫)
- 他所者の神戸(執筆)尾原宏之(『図書』岩波書店定期購読誌2021年6月号)
- 実力も運のうち 能力主義は正義か? マイケル・サンデル(著)鬼澤忍(訳)
- 「僕ら」の「女の子写真」から わたしたちのガーリーフォトへ 長島有里枝(著)
- 未確認ハンバーグ弁当(作)日向理恵子/日本児童文学2021年5・6月号
- 雲と空のはざまで(執筆)大河原 愛(『図書』岩波書店定期購読誌2021年5月号/巻頭)
- お探し物は図書室まで 青山美智子(著)さくだゆうこ(羊毛フェルト)写真(小嶋淑子)装丁(須田杏菜)
- 三の隣は五号室 長嶋有(著)中公文庫