コロナ禍(だけじゃなくて、いたるところ分断だらけ)という時宜を得た特集そのもの。特集は、今と未来を生きる少年少女たちにこそ贈られるべきだから、多彩な作品たちが一人でも多くの児のもとに届きますように。なかでも、わたしは本作がお気に入り。
少年の暮らす町の真ん中には、高いガラスの壁がありました。
「あの壁のむこうには何があるの?」
そう聞いた時の大人の答えはきまっていました。
「悪気(あっき)があるんだよ。悪気がこっちにこないように、あの壁が作られたんだ。だから、壁に近づいてはならないよ」
こんな書き出しで始まるおはなし。悪気は、わたしには悪鬼に聞こえて、その時点で児童文学と詩の境目を跨いでいる気分に。そrから、これだけは記しておきたい。装画がなんとも絶妙な雰囲気を共有していることを。
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