きょうも写真は扉。昔懐かしい、図書館の貸出票っぽいデザインだが、さりげなく添えてある「必ず期限を守りましょう。」の一文が謎めいて見えるのは深読みだろうか。そう思いつつ読んだ結果は……
深読みだったみたい。それでも特別なメッセージが込められていると執拗に勘ぐるのもまた愉快。
市立図書館リファレンスカウンターに勤務する青年が同僚とともに厄介な相談に本気でのめり込む連作で、癖強ながらもその姿は好感度が高い。
構成としてミステリーっぽくて、奇天烈な本探査のゆくえはよく練られている。ネタバレになるが、なかでも森林太郎(鷗外)とまぎらわしい林森太郎の本の話題とか。
さらに、町の図書館存廃を賭けた問題にこの青年が巻き込まれて、議会で参考人招致されて図書館の存在意義を語る件りは純粋に熱い。でも、その成否がエンディングじゃなくて・・・なんてところが、青春小説のいい味を出している。でも物語のなかでの取り扱い書籍から考えて対象年齢はおじさんおばさんのようではある。(相当年齢高めでもOK。)
付けたり。諸処に難読難語が散りばめられているのも、それっぽい世界観なんだろう。
最近の読書10冊
- 戦争は女の顔をしていない(著)スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ(訳)三浦みどり
- 徹底して戦争と死について書く(執筆)沼野充義(『図書』岩波書店定期購読誌2020年11月号巻頭)
- 夢の舟唄(德永民平詩集)
- わさびの日本史 (著)山根京子
- 国家への道順(著)柳美里
- 正義のゲーム理論的基礎(著)ケン・ビンモア(訳)栗林寛幸
- 社会契約論ーーホッブス、ヒューム、ルソー、ロールズ(ちくま新書)(著)重田園江
- 40代から始めよう! あぶら身をごっそり落とす きくち体操
- スケール 上──生命、都市、経済をめぐる普遍的法則(著)ジョフリー・ウェスト(訳)山形浩生・森本 正史
- 多数決を疑う――社会的選択理論とは何か (岩波新書)