コロナ禍(だけじゃなくて、いたるところ分断だらけ)という時宜を得た特集そのもの。特集は、今と未来を生きる少年少女たちにこそ贈られるべきだから、多彩な作品たちが一人でも多くの児のもとに届きますように。なかでも、わたしは本作がお気に入り。
少年の暮らす町の真ん中には、高いガラスの壁がありました。
「あの壁のむこうには何があるの?」
そう聞いた時の大人の答えはきまっていました。
「悪気(あっき)があるんだよ。悪気がこっちにこないように、あの壁が作られたんだ。だから、壁に近づいてはならないよ」
こんな書き出しで始まるおはなし。悪気は、わたしには悪鬼に聞こえて、その時点で児童文学と詩の境目を跨いでいる気分に。そrから、これだけは記しておきたい。装画がなんとも絶妙な雰囲気を共有していることを。
最近の読書10冊
- 「おばさん」がいっぱい(執筆)三辺律子(『図書』岩波書店定期購読誌2021年4月号/本をひらいた時)
- 七万人のアッシリア人 ウイリアム・サローヤン(著)斉藤数衛(訳)現代アメリカ作家集上巻所収1971年初版
- 季(とき)間中ケイ子(筆)ほか/日本児童文学2021年3・4月号 特集25年後の子どもたちへ
- カフカらしくないカフカ 明星聖子(著)
- 雪の練習生 多和田葉子(著)
- 物理の館物語(著者不明)/小川洋子『物理の館物語』参照(柴田元幸編『短篇集』所収)
- 『還れぬ家』『空にみずうみ』佐伯一麦(著)
- 十一年目の枇杷(執筆)佐伯一麦(『図書』岩波書店定期購読誌2021年3月号/巻頭)
- もっともらしさ(執筆)畑中章宏(『図書』岩波書店定期購読誌2021年3月号/らしさについて考える④)
- 【続】フランツ・ファノン『黒い皮膚・白い化面』小野正嗣(筆)NHK100分de名著