ゲーデル,エッシャー,バッハ―あるいは不思議の環(1985年版)

率直に言って、何がテーマなのかすらさっぱりわからんのに、おまけのフリした挿話群が読んでいて愉しい奇書である。きっかけは単純にエッシャーの絵と訳者柳瀬尚紀さんが好きだから、それだけ。柳瀬さんがこの書について「本や苦」なんて駄洒落を披露しているくらい、著者の凝りに凝ったオタク的編集ぶりがまた700ページ超を遊園地的(なんて形容が適してるかどうか怪しい)読み物に仕上げている。

タイトルに添えられている「あるいは不思議の環」が三者をつなぐキーワードみたいだが、無限ループとか合わせ鏡の世界をイメージするとわかりやすいかもしれない。(それが妥当かどうかは知らないが。)

冒頭で本書(GEBと称されるらしい)の概要が提示されるが、まずもって理解できなかった。ただ全20章のあいだに挿入されている、有名なアキレスと亀の対話劇がとっても愉しげで、その劇を理解するために全篇が存在するんじゃないかと思えるほど、主題は見えないまま連なっている。アキレスと亀の舞台を鑑賞するつもりで読めば、それなりに面白いと満足できる。(映画や芝居に論理性が欠けていても楽しめることってあるでしょう。それと同じ。)

 

それに図版リストによれば152図も散りばめられていて、エッシャーマグリットの絵がモノクロながらふんだんに登場してるだけでもわくわくした。

 

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