哲学が量子物理学の領域に首を突っ込んで出来た一冊。本文はわずか40ページだが、付録としてのマヨラナの論文ほか一篇の数学論考(ジェロラモ・カルダーノ著)および解説が120ページもある。これってお得感があるようで実は無いのだ。(俗に言う文系と理系の双方を気軽に行き来できない人は読む気も起こらないかもしれない。)びっくりするような結論はまったく無い凡書なのに、量子理論について知識がたりないと読むことさえ苦労させられ、高度な思考をした気分にひたれるだろう。結局のところ、「実在とは何か」という問いには何も答えていないのに。
簡単に内容を紹介するなら、1938年におきた物理学者エットレ・マヨラナの失踪事件(不可解千万)の意味を、哲学者ジョルジュ・アガンベンが問うて回答してみせた2016年の書、の邦訳がこの2018年本ということになる。