古典の域にある傑作童話が著者の本国ベルギー語の原本から忠実に訳されて出た。長年親しまれてきたのは、英訳本からの迂回訳プラスアレンジで、それなりに名訳なのは間違いないが、原作者の思いに沿いきれてない面も(そのことは旧訳者・中野好夫さんも公開されてたよ)。
たとえば挿画も作者カレル・チャペック自身の手になるんだけれど、表紙絵の"小人"たちのことはこれまで"妖精"って訳されていたのだ。こまかいことをいえば、"野ウサギ"がこれまで"ハツカネズミ"(家ネズミの一種)になってたり、"咳が出て体調不良"とあるところが"かぜ"にされたり、とか。咳が出てる症状にたいして即座に風邪と診断するのは藪医者といえそうだから、藪訳になっちまう?(中野さんのことじゃないよ、たぶん英訳のせい。)
※そんなこんなと、訳本のよみくらべをしている私はよほど暇だと思われるだろう。それは大いなる誤解だ。もしも暇なら、ベルギー語を学んで原著との比較照合までする(かもしれない)。