
わたしには理解不能の世界である。夏目漱石先生を筆頭に、神経質な読書人の皆さんは静寂でなけれな無間地獄にも等しい苦痛と感じるらしい。わたしの場合は、どれほど騒がしい場所でも、本を読み出したら本の世界に没入してしまう性(たち)なのでそうでない人びとの気持ちがよくわからない。(そんなわたしも睡眠の際は静寂でなけれな無間地獄と思うので、人それぞれだなあというくらいは感じている。)
ショーペンハウアーはこんなこともいっている。音になんら煩わされることもなく私の苦痛を笑う人間は、無感覚ゆえに思想も詩も芸術も解さない、頭脳の鈍い野蛮な奴らなのだ。
笑うしかない、本当に。大澤さんらから見てわたしなんぞは野蛮人らしい。腹立つどころか笑うしかない。きっと、自称読書人には、静寂必須人とか騒音無関係人とか、いろんなタイプの読書人がいるのです。実に愉しい世界だ。
最近の読書10冊(願望を含む)
- 「おばさん」がいっぱい(執筆)三辺律子(『図書』岩波書店定期購読誌2021年4月号/本をひらいた時)
- 七万人のアッシリア人 ウイリアム・サローヤン(著)斉藤数衛(訳)現代アメリカ作家集上巻所収1971年初版
- 季(とき)間中ケイ子(筆)ほか/日本児童文学2021年3・4月号 特集25年後の子どもたちへ
- カフカらしくないカフカ 明星聖子(著)
- 雪の練習生 多和田葉子(著)
- 物理の館物語(著者不明)/小川洋子『物理の館物語』参照(柴田元幸編『短篇集』所収)
- 『還れぬ家』『空にみずうみ』佐伯一麦(著)
- 十一年目の枇杷(執筆)佐伯一麦(『図書』岩波書店定期購読誌2021年3月号/巻頭)
- もっともらしさ(執筆)畑中章宏(『図書』岩波書店定期購読誌2021年3月号/らしさについて考える④)
- 【続】フランツ・ファノン『黒い皮膚・白い化面』小野正嗣(筆)NHK100分de名著