きょうも写真は扉。昔懐かしい、図書館の貸出票っぽいデザインだが、さりげなく添えてある「必ず期限を守りましょう。」の一文が謎めいて見えるのは深読みだろうか。そう思いつつ読んだ結果は……
深読みだったみたい。それでも特別なメッセージが込められていると執拗に勘ぐるのもまた愉快。
市立図書館リファレンスカウンターに勤務する青年が同僚とともに厄介な相談に本気でのめり込む連作で、癖強ながらもその姿は好感度が高い。
構成としてミステリーっぽくて、奇天烈な本探査のゆくえはよく練られている。ネタバレになるが、なかでも森林太郎(鷗外)とまぎらわしい林森太郎の本の話題とか。
さらに、町の図書館存廃を賭けた問題にこの青年が巻き込まれて、議会で参考人招致されて図書館の存在意義を語る件りは純粋に熱い。でも、その成否がエンディングじゃなくて・・・なんてところが、青春小説のいい味を出している。でも物語のなかでの取り扱い書籍から考えて対象年齢はおじさんおばさんのようではある。(相当年齢高めでもOK。)
付けたり。諸処に難読難語が散りばめられているのも、それっぽい世界観なんだろう。
最近の読書10冊
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- アジの味(著)クォン・ヨソン(訳)斎藤真理子(頭木弘樹編『絶望書店』所収)
- ゆるく考える(著)東浩紀 (河出文庫)
- 他所者の神戸(執筆)尾原宏之(『図書』岩波書店定期購読誌2021年6月号)
- 実力も運のうち 能力主義は正義か? マイケル・サンデル(著)鬼澤忍(訳)
- 「僕ら」の「女の子写真」から わたしたちのガーリーフォトへ 長島有里枝(著)
- 未確認ハンバーグ弁当(作)日向理恵子/日本児童文学2021年5・6月号
- 雲と空のはざまで(執筆)大河原 愛(『図書』岩波書店定期購読誌2021年5月号/巻頭)
- お探し物は図書室まで 青山美智子(著)さくだゆうこ(羊毛フェルト)写真(小嶋淑子)装丁(須田杏菜)
- 三の隣は五号室 長嶋有(著)中公文庫