おしゃれな造りに嬉しくなる。しおり紐はみんな印刷されたもので、いわばフェイク尽くし。なかでも、扉のまえにある透明シートの仕掛けは絶品。
それ以外にも、随所に見開きの写真があるのだがそこにあしらったイラストがカワイイ。もちろん大量の絵本が紹介され、そのなかで「いい絵本」についての思索が深められるように組み立てられている。そのうえで著者は「ちゃちな子どもだまし」「大人の独りよがり」を廃していく。著者がその思いを強くしたエピソードが見事で、わたしもがつんとやられました。
児童文学者の斎藤惇夫さんが、その著『現在、子どもたちが求めているもの』(キッズメイト刊)の中で、編集者時代のこんなエピソードを・・・
赤羽末吉さんの『つるにょうぼう』を担当されていたときのことです。・・・斎藤さんが指折り数えてみると、機織り機を見にどこそこへ出かけたり、着物を調べにどこどこまで行ったりと、もう六年もたっていました。・・・赤羽さんは・・・最後に「だって相手は子どもなんだぜ」とこうおっしゃったそうです。
- 「おばさん」がいっぱい(執筆)三辺律子(『図書』岩波書店定期購読誌2021年4月号/本をひらいた時)
- 七万人のアッシリア人 ウイリアム・サローヤン(著)斉藤数衛(訳)現代アメリカ作家集上巻所収1971年初版
- 季(とき)間中ケイ子(筆)ほか/日本児童文学2021年3・4月号 特集25年後の子どもたちへ
- カフカらしくないカフカ 明星聖子(著)
- 雪の練習生 多和田葉子(著)
- 物理の館物語(著者不明)/小川洋子『物理の館物語』参照(柴田元幸編『短篇集』所収)
- 『還れぬ家』『空にみずうみ』佐伯一麦(著)
- 十一年目の枇杷(執筆)佐伯一麦(『図書』岩波書店定期購読誌2021年3月号/巻頭)
- もっともらしさ(執筆)畑中章宏(『図書』岩波書店定期購読誌2021年3月号/らしさについて考える④)
- 【続】フランツ・ファノン『黒い皮膚・白い化面』小野正嗣(筆)NHK100分de名著