短編ならではの、日本的な空白の美学と感歎するばかり。主人公のうら若い武家妻・野江の不遇にふと訪れた微かな恋心は、不倫といってしまえばそれまでだけれど、そんな俗語で穢してほしくない救済の希望を纏いながら彼女を突きうごかしてゆく。で、どうなるの、というところは状況も周辺人物の思いも全く描かれることなく、読者の夢想に委ねられる。
やっぱり渋くて巧いなあ、藤沢先生は。
- 戦争は女の顔をしていない(著)スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ(訳)三浦みどり
- 徹底して戦争と死について書く(執筆)沼野充義(『図書』岩波書店定期購読誌2020年11月号巻頭)
- 夢の舟唄(德永民平詩集)
- わさびの日本史 (著)山根京子
- 国家への道順(著)柳美里
- 正義のゲーム理論的基礎(著)ケン・ビンモア(訳)栗林寛幸
- 社会契約論ーーホッブス、ヒューム、ルソー、ロールズ(ちくま新書)(著)重田園江
- 40代から始めよう! あぶら身をごっそり落とす きくち体操
- スケール 上──生命、都市、経済をめぐる普遍的法則(著)ジョフリー・ウェスト(訳)山形浩生・森本 正史
- 多数決を疑う――社会的選択理論とは何か (岩波新書)