命のうた ~ぼくは路上で生きた 十歳の戦争孤児~[竹内早希子(著)石井勉(絵)]

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「おまえらはバイキンのかたまりだ。野良犬と同じだからな。きれいにしてやる」と薄く笑いながら言うのでした。(本文p.99)

 

戦後12万人以上いたとされる戦争孤児 のひとり山田清一郎さんの実話をベースにしてあるという。凄惨な話なのに読んで安らぐのは、終盤なんども出てくる歌のシーン。

♪緑の丘の 赤い屋根/ とんがり帽子の 時計台/ 鐘が鳴ります キンコンカン♪

このほかにも、赤パンのヤスと呼ばれた少年がおねしょした布団を干しながら口ずさんでは泣いた歌。

♪春はあけぼの うぐいす鳴いて/ さめてうれしい あにいもうと/ 母とそい寝の 幼い夢よ/ むかしこいしや なつかしや♪

清一郎の母が遺した唯一の思い出の歌

♪青い月夜の 浜辺には/ 親を探して 鳴く鳥が/ 波の国から 生まれ出る/ ぬれたつばさの 銀の色♪

どの歌詞にも、作者竹内早希子さんは”♪”マークを付けてくれている。わたしは、この♪に救われながら読み切った。きっと、この本を手にする子達も。。。

と言いつつ、哀しい物語があとがきに添えられている。作者はこの原稿を書き終えて2週間後に、東京でひとりのホームレスおじさんと出遭う。そのひとは主人公のセイちゃんと同い年。セイちゃんがのちに本当に恵まれ教育を受け先生になったのは、希有だったのでしょう。そのひとは戦争孤児になってから70年以上、一度も畳の上で寝ることなく野宿で生きてきた。「だれの世話にもならないで生き抜いてやるって・・・」そう言った同じ口で「助けてくれるなら、子どものときに助けてほしかったよ」と。

 

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