詩集 原子雲の下より(青木文庫)

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広島原爆投下から7年後に刊行された詩集。編纂委員会に集められた1,389編から選衡された詩はどれも、庶民老若男女の生々しい声。 とりわけ小学生高学年くらいの詩は、ことさら詩であろうとしない叫びが息づく。序文で編者の一人、峠三吉さんもこう述べている。(以下抜粋。)

文学の立場からの問題としてふれておきたいことは、・・・原爆や戦争の本質にたいする鋭い洞察からくるすぐれた作品が二、三あり・・・その要素が子供や詩を初めて書いた人々に多く、その反対に積極的なテーマをうたいながら抽象に陥り説得力を持たぬ作品が、詩を書き慣れた人人の方に多かった・・・

 

◆総じてみれば、基本的に戦争・原爆を憎み平和を希求する作品が多いのは当然だし、おそらく本書の紹介でそうした事例が多々示されてきたと思うが、戦後7年の時点の副次的な不幸や苦悩もまた散見されて胸が痛む。

小学六年の岡本陽子さんの詩を記録しておきたい。

ピカドン
けがをしてるきみちゃんを
男子はみんな
きっぽ きっぽ と わる口を言う
わたしには
わけがわからない
げんばくにあたって
きみちゃんが悪いのなら
げんばくで死んでいった
赤ちゃんも
おともだちも
みんな悪いことになる

※きっぽ:傷跡のこと ※全文掲載。著作権の問題があるならゴメンナサイ。

◆わたしが読んだのは1977年発行の第13刷。1970年4月付のあとがきで編者の山代巴さんが編者として名を記す心境を綴っているのがまた印象的。編纂委員会のなかで実際に蒐集に動いていた中心の広島大学学生・川手健さんのこと。被爆者救援活動のゆえに赤のレッテルを貼られて就職も出来ず、ついには自殺し、忘れ去られていく事実を看過できないと明記されたのだった。原水禁の活動の紆余曲折そのものも忘れてはいけない。人間とはそんな生き物であるということを。

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◆デザインのことも記したい。碧いカバーを剥がして現れたのは、まるで岩波文庫を思わせる、今はなき青木文庫。

◆本書は、今月読んだ岩波の『図書』表紙をかざる司修さんの文章を契機に入手した一冊。

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