天才岡本太郎の著作集の第1巻。50代にして若い頃を回想しつつ綴った文章とは思えない若々しさ、溌剌嬉嬉とした熱気がほとばしっている。しかも絵画にしろ、建築にしろ、デザインにしろ、それなりの知識と世間的評価を無視した解析が縦横無尽に示されて心地よい。(他の絵画評論家・研究者の文献を参照しながら読むとすこぶる面白い。)
ピカソの傑作ゲルニカを語るを例に挙げれば、天井とおもえるところにある光源・電灯を一般には神の光だとか解釈するようだが、岡本はそんな解釈に触れることさえなく、この作品を語るのに真っ先に電灯に注目し室内の惨劇を示すのだと断ずる。わたしには、神の光と説明されるより、すっと胸に入った。それは日本人だからかもしれない。そして岡本は最高の賛辞を送ると同時に、歴史背景にふれてピカソの限界とさえも言い放つ。すごいなあ。
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