神秘日本と題された一連の日本秘境探訪の論考は1964年が初出。わたしが大阪万博の太陽の塔ではじめて彼を知った1970年より6年も前のこと。世代が大きく違うといってしまえばそれまでだが、ヘンな芸術家として認知して、ほぼそのままの印象で今に至る。ああはずかしや。本書を読んでいると、民俗学者さながらでもあり、それでいて庶民感覚というかわたしらと同じ視座で各地の文化を見つめている。ところが話が芸術談義に飛び火すると、とたんに燃えるようなエネルギーの塊となって、目の前の文化の本質に肉迫するのだ。
たとえば呪術と芸術の働き方について彼は共通の矛盾を見る。そのときは言葉が、その真剣さなり、ほとばしる感情に追いついていないように見受けられる。だから芸術表現者となるのだなと、わたしは独り合点した。