アフガニスタンで命を落とした医師中村哲先生を慕って現地NGOが各1,250冊作成し地元の子らに配布した絵本2冊だ。日本語版となって邦訳出版されるに際しては縁のあったさだまさしさんの訳として売られて発売即重版とか。でもわたしは敢えて元の絵本たちを読みたいと切望する。さだまさしさんの偉業を否定するわけではないが、かれの名前を前面に出して売る商法は好きになれない。厳密には「日本語翻訳製作 さだまさし ほか」となっているけれど、わたしは「ほか」とある処にもっと光を当てて欲しかった。原書の出版そのものに日本のNGOも関わり、その呼びかけで多くの日本人が寄付もしている。現地において、日本などからの支援を得てようやく2500冊製本配布している一方で邦訳本が爆発的に売れるという経済格差、出版格差、それは読書の格差であって、わたしたちはもっとそこに目を向けたい。そして、(これは見方によれば傲慢といわれることを承知で書くが)好き放題に読書しているわたしたちのその拠出が回り回って世界中の子らの読書に資するような、そんな国際的なシステムが自然と構築されることを願ったりしている。そのためなら(わずかなら)価格の上乗せもいいんじゃないか。消費税も大事だけれど、もっと大きな視点も大事にしたい。
- EREWHON エレホン サミュエル・バトラー(著)武藤浩史(訳)
- 失われた芸術作品の記憶 ノア・チャーニイ(著)服部理佳(訳)
- 問いかけるアイヌ・アート 池田忍(編)五十嵐聡美・貝澤 徹・小笠原小夜・吉原秀喜・高橋 桂・中川 裕・山崎明子・池田 忍(著)
- 撤退の時代だから、そこに齣を置く(執筆)赤坂憲雄(『図書』岩波書店定期購読誌2021年1月号/往復書簡「言葉をもみほぐす」最終話)
- 絵本の本 中村柾子著
- 藤井聡太 すでに棋士として完璧に近い(谷川浩司筆・文藝春秋2021新年特別号所収)
- 石たちの声がきこえる マーグリート・ルアーズ(作)ニザール・アリー・バドル(絵)前田君江(訳)
- 国旗のまちがいさがし 苅安望(監修)
- ひみつのビクビク フランチェスカ・サンナ(作)なかがわちひろ(訳)
- あしたはきっと デイヴ・エガーズ(文)レイン・スミス(絵)青山南(訳)