科学者が人間であること (岩波新書)

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「想定外」という言葉はイヤな感じ、と率直に訴えるベテラン科学女史の悔悟と提言そして警告の書。

自然とはそもそも想定が成立しない世界なのだから、おのが失敗を想定外ということは許されないと断じる。

東日本大震災の2年後に、科学者みずからが自身を顧みて、科学者のあるべき姿勢を問うた誠実な佳作。著者の中村桂子さんは1936年生まれだから、時代の最先端の科学研究に生きてきた女史。真摯なことばは重い。

この本の価値は、ご自身を含めたそうした科学者の内部にのみ向けられているのではないところ。科学のことは科学者に任せておけという大衆に対しても警鐘を鳴らしているのだ。

(ひとつ個人的な驚きは、本書で唐突に、わたしが若年にハマった大森荘蔵先生の思想が引用されていること。また勉強しようと思う。)

 

 

 

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