古句と聞いて、「コクがある」のコクと響くような印象(勘違い?)で手に取った一冊。
岩波文庫収録のおかげで振り仮名が付き、新字新かなとなって読みやすいのは有難いが、昭和18年の七丈書院本の表紙に配われた絵や筆文字の趣が失せるのは残念だ。左の写真は国会図書館のデジタルコレクションから拝借した。貼り付けたラベルのせいで台無しではあるが。。。
本書で鑑賞というか観察してある句は元禄期の、大方著名でない作者のものだから珍しいには違いない。文庫の帯には「滋味あふれる好著」とあって妥当と感心しつつも、個々の句そのものはどうも「地味」。著者柴田宵曲殿が次々繰り出す、有名な御仁の類句との比較は勉強になる、が後世に残る句、消える句の明暗はさもありなんと感じる。
好著といわれる要素の一つは、きっと、消え果てた古語の意味合いを慎重に推測されている探究姿勢にある。
元朝やにこめく老のたて鏡 (作者:松葉)
にこめくという言葉には「和」の字を宛てるのだろうか、と書いている。そして、新年の元朝を迎えた老人がにこやかに鏡に対しているところ、とある結びかたは句の雰囲気を尊重している。