茶話(岩波文庫 緑31-2)薄田泣菫・著

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 ダルビッシュ有似だという声に賛同。でも本書に纏められたコラムっぽいお話『茶話』が書かれたのは30代後半だから、もう少し老けているはず。実際に文章を読むともっと年嵩の印象だが、大正初期のヤングアダルトはこうだったのかもしれない。当時の欧米政治家や著名人、また江戸明治期の学者など多彩な人物の笑える逸話を次々と繰り出しているのは、情報蒐集能力としてすごいことだったにちがいない。

でも、今読むと、古臭い匂いがこびり付いてる(のは仕方ないね)。

文豪キプリング(Joseph Rudyard Kipling, 1865年– 1936年)は何度も登場するが名前を知っている程度だし、ロシアのバイオリニスト、ピアストロが大阪にきたことがあるといわれても知らないし、江戸時代の儒者の話題はついていけない。内容としては高貴であったり名を馳せた人でも愚かな言動をしているね、というたわいもない世間話だから、時代が変わったほどには人間の本性は変わっていないのがよく分かる。文章のセンスとしては結構、品がよくて、著名人を過度に貶めているとはいえない。凡人と一緒だよね、と収めている感じ。

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