霧のなかの白い犬 GIRL WITH A WHITE DOG by ANNE BOOTH

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白い犬こそ物語の重要なかぎを握っている。くわしくいえば白いジャーマンシェパード。白いことに意味がある。

より厳密には、黒いジャーマンシェパードでなければナチスドイツに大切にされなかった犬。ユダヤ人虐殺のはじまる前には、ユダヤ人が飼っているペット殺処分という法令が施行されていた。

小学校高学年の課題図書にかつて選ばれしイギリス児童文学。 扉絵の犬は表紙絵と同じに見えるが女性はちがう。現代イギリスの少女たちと、第二次世界大戦下に生きた少女たちとの歴史が交錯する。最初は、現代っ子のもとに待望の子犬が登場する平和な団らんから物語ははじまるのだが。

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本作のすばらしいところは、今を生きる少女が過去の戦争のかなしみ、不幸をわがこととして背負いつつ、未来のために小さな、けれど確かな一歩を踏み出す展開であろう。

 

表紙画の好みとして、わたしは邦訳本の橋賢亀さんの絵が好き。

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