美学への招待 増補版(中公新書1741)

即、招待されました! 美学を学ぶことは、ちまたを騒がす「不自由展」の意味を考えるのにも関わるだろう。入門書なのに濃厚、濃厚なのにスイスイ読める。2019年増補バージョンの15年ぶり増補っぷりがまた100ページ近くもあり、かつ新たな本といえるほどの内容転換(美学そのものが変わる?)がみられ、その上、お得感満載なのが巻末の文献案内。まず参照文献としてざっと8ページ。つづいて著者(佐々木健一先生)自身の著作8冊紹介3ページ。しめくくりが読書案内(1)他の入門書9冊それぞれ簡易説明付き(2)学説に関する参考書7冊これまた説明付き。しかも最後に掲載の1冊はどうやら一番のおすすめみたい。この1冊への招待のために本書が書かれたのかも、と思うほどだ。『藝術理論古典文献アンソロジー』(加藤哲弘編「西洋編」、宇佐美文理・青木孝夫編「東洋編」)、幻冬舎、2014年。

 

著者は西洋近代美学の研究者として日本の美学会会長や国際美学連盟会長などを歴任された、プロ中のプロ。その大先生が、美学とは何かを、根底から再構築しようとしているのだ。従来は、藝術のなかに美学が求められてきたが、これからは美の追求のなかに藝術が語られる時代に変わっていくと。「永遠」型の藝術こそ真の藝術とされてきたが、現代の「問題提起型」藝術を藝術と認めるのか、との設問は重い。

そんなこんなでやや難しいテーマの本だが、藝術=アートではないとの感覚はなるほど、と思う。ここでも(翻訳)言葉そのものの重要性に共鳴するわたしがいる。意味だけでは無いモノ、意味以上のモノが言葉には宿っているし、知らぬ間に言葉によって誘導されている面もあるだろう。

 

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