鶏冠詩人伝

童話作家のほかに多彩な顔を持つ庄野英二が自ら装丁・装画も手がけた回顧録は明治・大正・昭和にまたがる偉大な作家たちの群像劇そのものだ。坪田譲治島崎藤村井伏鱒二佐藤春夫らとのエピソードに、時代の熱気を感じる。一番の驚嘆は、かれの記憶力。幼稚園児(大正11年入園)のときに教わった、同い年の澄宮(のちの三笠宮。自称は宮クン)の詞に曲のついた童謡をうろ覚えとして紹介している。サトウハ アマクテ シロクテ オイシクテ ギュウニュウ ナンカニ イレテノム・・・・・・。

鶏冠詩人を名乗った由来も事細かに綴られているが、わたしはてっきり南方熊楠の文章『十二支考』にある「コックス・コーム(鶏冠)は きざにしゃれる奴の蔑称」あたりが絡んでいるのかとおもった。(案外、本当にそれも含んでいるのかもしれない。)

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