ゲーテもシラー、ヘルダーリンも読んだこと無い人は大損だよ。まず本書を読んで思いっきり後悔しよう。著者相沢那織子さんの言う通り、名前はよく知っているのに肝心の詩をきちんと読んだことがない、そんな近寄りがたい偉人について、作品観賞ではなく軽やかなドラマを提供してくれるエッセイ集になっている。それにつけても未知の扉を開いてくれる最大功労者は邦訳者、手塚富雄・高橋秀夫・浅井真男ら。彼らこそ、なんて崇高な黒子的偉人なんだ。
忘れてならない感動的事実を一つ、二つ。ゲーテらの文章には難解なことばなど無い。そして叙情豊かであっても、決して感情に流されたりせずに真っ直ぐ流れていく。それが一流の至高を行く文豪の真価だった。されば、読まずにいる者はどんだけ損な人生を送っているのか。