自分の中で長年もやもやしていた「言葉にならない何か」にひとつの名前を授けてもらった気がする。人はなぜ読書するのか? 「本」の世界に意味を求めがちだが、「本という考え方」の世界、そういう世界観こそが人を吸引しているのだ。
本という文化が長年かかって培ってきたものは、本に書かれているものを通して、そこに書かれていないものを想像させるちからです。今日、わたしたちの社会がぶつかっている問題は、書かれていないものを必要とする考え方をなくしてしまったことに起因している、そのためにとまどっているように思われるのです。
著者は、わたしたちの既成概念をひっくり返してくれる、まさに「本という考え方」をストレートに突き付けている。
読書というのは、「私」を探している本に出会うという経験です。(中略)のぞむべきは、本は「私」の友人、というあり方でなく、「私」は本の友人、というあり方です。
子どもの本に対する考え方には大いに賛成。わたしは本屋でも図書館でも、一人で児童書コーナーをうろうろするのだけれど、それって「変なおじさん」視されていて、多くの人は「しない」行為というのにはビックリした(笑)。
子どもの本についての、これまでのような「子どもだけが読むべき本」とするような考え方の縛りになっている先入観を崩してゆく。そうすることで、子どもの本の世界を、子どもたちと大人たちとが一緒にそこにいる想像力の場にしてゆかないと、子どもたちの世界からも、大人たちの世界からも、何か大切なものがこぼれていってしまうのではないかと怖れます。
最近の読書10冊(願望を含む)
- 戦争は女の顔をしていない(著)スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ(訳)三浦みどり
- 徹底して戦争と死について書く(執筆)沼野充義(『図書』岩波書店定期購読誌2020年11月号巻頭)
- 夢の舟唄(德永民平詩集)
- わさびの日本史 (著)山根京子
- 国家への道順(著)柳美里
- 正義のゲーム理論的基礎(著)ケン・ビンモア(訳)栗林寛幸
- 社会契約論ーーホッブス、ヒューム、ルソー、ロールズ(ちくま新書)(著)重田園江
- 40代から始めよう! あぶら身をごっそり落とす きくち体操
- スケール 上──生命、都市、経済をめぐる普遍的法則(著)ジョフリー・ウェスト(訳)山形浩生・森本 正史
- 多数決を疑う――社会的選択理論とは何か (岩波新書)