藤富保男さんの詩は、ハズレなしって印象で、いつ出逢っても頭のコリや痺れを癒やしてもらえるというのがわたしの感想。その偉大な詩人の追悼というので即買いしたが、筆を執る人ごとに違う一面を教えていただいて改めて感服した。「言語を信用しないで書く」人であり、「人間字引」「困った詩人」「歩くパイプオルガン」「一読したときの面白さが全方位的」「ピアノそのものになってしまったピアニスト」(表紙絵も彼の作品だ)「爽迷詩人」「公立中学校の英語教師、サッカー部顧問」「不死身だったはず」「素敵な人間嫌い」etc…
かれの詩学と題したページには、著作の多彩な断片が披露されてある。
僕は詩を書く気はないし、書こうとも思っていないのである。僕が書いているのは、何となく詩らしいフォルムをとりながら、噴流のように発射するがポエジイを人為的に加工して記述しているだけで(以下略)
『藤富保男詩集』(思潮社、1973年)
謹んで哀悼の意を表す。合掌
最近の読書10冊
- 「おばさん」がいっぱい(執筆)三辺律子(『図書』岩波書店定期購読誌2021年4月号/本をひらいた時)
- 七万人のアッシリア人 ウイリアム・サローヤン(著)斉藤数衛(訳)現代アメリカ作家集上巻所収1971年初版
- 季(とき)間中ケイ子(筆)ほか/日本児童文学2021年3・4月号 特集25年後の子どもたちへ
- カフカらしくないカフカ 明星聖子(著)
- 雪の練習生 多和田葉子(著)
- 物理の館物語(著者不明)/小川洋子『物理の館物語』参照(柴田元幸編『短篇集』所収)
- 『還れぬ家』『空にみずうみ』佐伯一麦(著)
- 十一年目の枇杷(執筆)佐伯一麦(『図書』岩波書店定期購読誌2021年3月号/巻頭)
- もっともらしさ(執筆)畑中章宏(『図書』岩波書店定期購読誌2021年3月号/らしさについて考える④)
- 【続】フランツ・ファノン『黒い皮膚・白い化面』小野正嗣(筆)NHK100分de名著