高齢者の健康指標としての造語「フレイル」は、英語のフレイルティ(Frailty;虚弱、老衰、脆弱)をもとに、身体機能だけでなく認知機能や社会的なつながりまで幅広く包括的に個人の「おとろえ」状態を示す用語だ。あえて英語っぽい言葉が使われているのは、虚弱、老衰、脆弱などというときに付きまとう悲観的なイメージを払拭する狙いがあるとか。おとろえではあっても適切な対策を講じれば改善する、つまり要介護状態に至らない、可逆的な要素を強調する意味において「フレイル」には明るい響きがある、と専門家(東京大高齢社会総合研究機構の機構長・飯島勝矢氏)は解説している。
なのに、だ。フレイルチェックやフレイルサポーターといった新しい試みを推進する自治体そのものが、コロナ禍の影響で活動を停止するなど「フレイル状態」に陥っている、と苦言を呈している。この場合の「フレイル状態」には悲観的なイメージが付きまとっているように感じられてならない。無論、改善の余地があるからこそフレイルと言えるのかもしれないが、いまだ社会に定着していない用語を比喩的に用いるのは、楽屋ネタを公開する芸人みたいな発言だろうか。
《参考》愛媛新聞2020/11/17生活面 「コロナ虚弱」防げ