ドクトル・ジヴァゴ(工藤正廣・訳)

分厚い。ロシア文学アレルギーのわたしには厚すぎる。でも好きになった箇所もあるから不思議、読書ってやつは。小説の主人公ドクトル・ジヴァゴはそのタイトル通り医師なんだが、詩人でもあって、なんと彼の作品(ということは著者ボリース・パステルナークの作品)25篇が巻末に付いている。1つや2つじゃないいんだ。そこだけは何度も読めた。

どれも基本的に、わたしたち、たぶんジヴァゴと彼女の二人をうたっていて、宗教色の強い詩が多い。が、一様に離別に寄せる思いやかなしみに覆われている。(本編を読破してないので、ほんとのところはよくわからないが。)

なお、(意味の有る無しは不明ながら)個人的覚えとしての意味で、詩のNo.とタイトルと部分を幾つか抜粋をしてみる。

7 市中の夏

馨しい匂いの/まだ花を咲かせている/老いた菩提樹たちが/寝不足で不機嫌な表情で眺めている

10 小春日和

お気の毒さま さかしらな人が思う以上に/もっと森羅万象は素朴で単純だということ/お気の毒さま 茂みが水中のように垂れていること/お気の毒さま 何事にも終わりがあるということ

16 わかれ

彼女はどの線ひとつも/あまりにもいとおしかった/ちょうど渚の寄せる波のすべてが/海にとっていとおしいように

 

追記)それだけじゃなくって、著者の略年譜にあわせてこの歴史大作の構想の遍歴や執筆状況が書き加えられている。編集もすごいってこと。

 

 



 

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