ロジェ・カイヨワ『戦争論』 2019年8月 (NHK100分de名著)

原題を直訳すると『ベローナ、あるいは戦争への傾き』。このベローナっていう女神こそが重要なのであった。わたしらがよく知る軍神マルスは男として戦勝の武勇面を表象し、その陰にいるベローナは血肉が飛び散る凄惨な側面を司るという。つまり本書は、戦争の見てはいけない部分こそ正視しろと訴えているのだ。今から100年以上前の著でありながら、現代人にも届くメッセージ。凄い。戦争の本質を教えている。グサリと心に刺さるのは、カイヨウの言辞が現代の「テロとの戦争」をも予見しているかのように見えるところだ。テロとの戦争は許される戦争なのか。テロリストという概念の創出は、正義なのか。

ベローナを見よ、というのを如何に受け止めよう。

ロジェ・カイヨワ先の大戦後にユネスコで働いた。その思いが本書に綴られている。戦争を語るのに、まずベローナの側面を見よ、教えよ、そういう平和教育論なのだ。

 

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