扉書きには「物名歌と折句にこめて二二三名の詞友に餞る」とあるが、二二三の歌がどれもこれも超然の境にいざなってくれるほど言葉ひとつひとつが撰び抜かれている。おあそびの折句ではない。
ただ、同名登場が二箇所あって、まさかの同姓同名?
当該最初の友は、秋谷(あきや)まゆみさん。一歌目は、
淡つけき桔梗の夕べやすらふは待つ人のながきながきゆあみよ
二歌目が、
碧瑠璃の秋や長月透きとほり蚕(こ)が眠る繭見つつかなしも (※「蚕」字は異体字で表記)
もうひとりの友は林和清さんで、この方への二歌は、
月夜佳し臘梅月夜ほととぎす月夜今宵ははや鹿月夜
花野の月流るる早し被衣(かづき)佳き女人と刹那すれちがひつつ
(・・・ううむ難解。)
あとどうしても記録しておきたいことは、装幀の気品かな。カバーは黒字なのに、カバー下に現れる標題は金箔の刻印で紙質の風合いはどちらも同じにしてある。渋い。