鎖国 日本の悲劇(昭和26年縮刷版)

畏れ多い言い方になるが、この本は戦後まもない迷著にもかかわらず名著として受容された貴重な歴史書だと思う。

右から左へ読ませる扁額風縦書き表記を見ただけで時代を感じさせる。前年刊行本の縮刷版として1月20日発行で2月10日再版とある本書はどんな読者にひろく読まれたのだろう。(そんな研究はないものかと、関心がそれてしまいそうになる。)

 

和辻哲郎の本書は昭和25年の読売文学賞を研究部門で受賞した。選考委員は文学者ばかりだったが、戦後まもない知識人の代表としては十分だったろう。敗戦の遠因としての鎖国研究。当時としてはそうした分析そのものが、精神的救いと未来への展望を与えたことは疑いない。しかし、現代からみれば、なんとゆがんだ史観のなかに生きていたのだ、と哀れみすら感じてしまう。

 

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