武満徹―私たちの耳は聞こえているか

「衰弱した肉体と虚大な精神が、大人の言葉を貧しいものにしている。」

 

今は亡き前衛作曲家(当人の理想に倣えば、音の表現者)・武満徹のエッセイ集。音を大切にしたのはいうまでもないが、それにも増してことばをとても大切にした。曲をつくる時には音を弄ぶことを嫌い、文章をものする時にも肉体から遊離した言葉の虚しさを拒絶した。無邪気な子らの語り口にこそほんものの言葉があると見抜いていた人。

 

晩年、死の優しさを信じていたと号する独白にはドキリとしてしまった。

 

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