この昭和31年版が最初の『乞食王子』だと思う。カバーイラストもいいし、本紙のイラストも好きだ。そんなことより好きなのは、やはり自称乞食王子の著者の文章だ。戦後の文筆家として、あるときはGHQにも出入りし、あるときは大阪昇平や横光利一と交流し、またあるときは酔いどれ乞食で酒場を盛り上げた、らしい。本書は西日本新聞に連載した、そんなまさしく乞食王子の名にふさわしいエッセー集。下品下劣の寸前(?)まで奔放に書いた風で、たしかな見識や知性と人間味を感じさせる。ああ、平成にはいないタイプだろうなあ。
追記)著者名:吉田健一
こう記しておかないから、あとで検索に苦労したのだ。(令和2.8.22記)