
ゆるく。それは生ぬるく聞こえるが、途轍もなく一途に、周辺にまとわりつく粘着思考を離れる考察態度を意味していた。外野の声を遮断して「考え続ける」価値を教えられた気がする。その意味では気易く「エッセイ集」と呼んでしまっては軽すぎるんじゃないかな。
2019年1月に発表された「悪と記念碑の問題」は著者の少年時代から連綿と続く関心事「政治や組織に力によって媒介され増幅される悪」について邪悪な歴史を伝える記念碑の意味とともに語る。記憶するために建てられる碑でありながら、建てて安心してさせてしまう忘却装置の役割も有するとの感想が開陳されて、ドキッとした。そこに政治的作為が見え隠れするなら尚更である。抽象化と数値化の暴力とも示される現実に、いままさにコロナ禍の政策報道を重ね見る。個々人の苦悩が見えなくされていく。日々の報道の洪水をまえにわたしは、「ゆるく」考えることを放棄してしまいそうになっている・・・・と教えて貰った。
最近の読書10冊(予定を含む)
- 春の宵(著)クォン・ヨソン(訳)橋本智保/韓国女性文学シリーズ4
- アジの味(著)クォン・ヨソン(訳)斎藤真理子(頭木弘樹編『絶望書店』所収)
- ゆるく考える(著)東浩紀 (河出文庫)
- 他所者の神戸(執筆)尾原宏之(『図書』岩波書店定期購読誌2021年6月号)
- 実力も運のうち 能力主義は正義か? マイケル・サンデル(著)鬼澤忍(訳)
- 「僕ら」の「女の子写真」から わたしたちのガーリーフォトへ 長島有里枝(著)
- 未確認ハンバーグ弁当(作)日向理恵子/日本児童文学2021年5・6月号
- 雲と空のはざまで(執筆)大河原 愛(『図書』岩波書店定期購読誌2021年5月号/巻頭)
- お探し物は図書室まで 青山美智子(著)さくだゆうこ(羊毛フェルト)写真(小嶋淑子)装丁(須田杏菜)
- 三の隣は五号室 長嶋有(著)中公文庫



