アフガニスタンで命を落とした医師中村哲先生を慕って現地NGOが各1,250冊作成し地元の子らに配布した絵本2冊だ。日本語版となって邦訳出版されるに際しては縁のあったさだまさしさんの訳として売られて発売即重版とか。でもわたしは敢えて元の絵本たちを読みたいと切望する。さだまさしさんの偉業を否定するわけではないが、かれの名前を前面に出して売る商法は好きになれない。厳密には「日本語翻訳製作 さだまさし ほか」となっているけれど、わたしは「ほか」とある処にもっと光を当てて欲しかった。原書の出版そのものに日本のNGOも関わり、その呼びかけで多くの日本人が寄付もしている。現地において、日本などからの支援を得てようやく2500冊製本配布している一方で邦訳本が爆発的に売れるという経済格差、出版格差、それは読書の格差であって、わたしたちはもっとそこに目を向けたい。そして、(これは見方によれば傲慢といわれることを承知で書くが)好き放題に読書しているわたしたちのその拠出が回り回って世界中の子らの読書に資するような、そんな国際的なシステムが自然と構築されることを願ったりしている。そのためなら(わずかなら)価格の上乗せもいいんじゃないか。消費税も大事だけれど、もっと大きな視点も大事にしたい。
- 春の宵(著)クォン・ヨソン(訳)橋本智保/韓国女性文学シリーズ4
- アジの味(著)クォン・ヨソン(訳)斎藤真理子(頭木弘樹編『絶望書店』所収)
- ゆるく考える(著)東浩紀 (河出文庫)
- 他所者の神戸(執筆)尾原宏之(『図書』岩波書店定期購読誌2021年6月号)
- 実力も運のうち 能力主義は正義か? マイケル・サンデル(著)鬼澤忍(訳)
- 「僕ら」の「女の子写真」から わたしたちのガーリーフォトへ 長島有里枝(著)
- 未確認ハンバーグ弁当(作)日向理恵子/日本児童文学2021年5・6月号
- 雲と空のはざまで(執筆)大河原 愛(『図書』岩波書店定期購読誌2021年5月号/巻頭)
- お探し物は図書室まで 青山美智子(著)さくだゆうこ(羊毛フェルト)写真(小嶋淑子)装丁(須田杏菜)
- 三の隣は五号室 長嶋有(著)中公文庫