お葬式 死と慰霊の日本史お葬式 (著)新谷 尚紀

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 もっとも強烈な記憶を植え付けたのは、霊長類学者・水原洋城さんのことば「死は事実ではない」「死は概念である」。

宗教的な謂いではなく、ニホンザルの生態観察の結果として、人間以外の動物は死体をどうもせず立ち去る事実。人間は動物の心情を勝手に想像していると断じている。

(動物の気持ちについては、仏教からは明確ではないものの、生死一如の立場からいえば死は事実であるし、概念でもあるとするのが妥当ではある。)

そこはさておき、本書は民俗学として、古今の学者の手法を広く紹介しながら、日本史というかたちで概念の変遷とその意味するところを示してくれる。その都度の参照文献をしっかり注記してある点は大いに評価できる。

なかでも欧米のメモリアルという概念を日本語で安易に使っている指摘はもっと拡散すべきだろう。

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