子規の音 (新潮文庫)

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 著者・森まゆみさんの「子規」好き好きオーラがあふれていて、時として史実から当時の子規さんの表情を想像して愉しんだりしているふうで、それが、ある意味壮絶な子規さんの天衣無縫っぷりと相俟って、たのしく読める。

子規とは、言わずと知れた俳人、文庫版表紙にある写真の男。かれの句や歌を交えた一代記であり、その取材記録の足跡でもあり、音に象徴される五感まるごとで子規の行く先々を追っかけたミーハー講談でもある。著者は「子規が好きでたまらない」から、東京で転々と在所を替えた跡までも丹念に辿ろうとする(けど限界はあったみたい)。

子規は一時期、芭蕉の『奥の細道』をみずから旅したが、その子規の歩んだ人生の小道を旅して追体験してみせたのが本書ということになる。

 

余談ながら、WEBにある角田光代さんの書評に惹かれたのだが、角田さんは小冊子「JAFMATE」の2020年8・9月合併号でも本書を紹介。その文もまたいいのだ。

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