戦後75年のシリーズ刊行本。知ってるようで何も知らない、戦争孤児たちのこと。たとえば、舵子問題。舵子事件だって初耳。これは古くから漁業であった児童売買などが根底にあるが、戦争孤児もまたその中に組み込まれたのだ。そうした希有な証言や文献を、主に瀬戸内・愛媛県下などで丹念に調査された水野喜代志さんをはじめとして、学者ではない市井の賢者も本書に携わっておられる。水野さんの場合、肩書きは「なかま共同作業所施設長」とあるだけ。他にも中学校教諭・平井美津子さんの名もあげておこう。
最後にこれだけは言わねば。本来は、国家の責任に於いて、戦争孤児の生活・教育保障がなされるべきであったし、せめて未来への記録と伝承もまた政府の仕事にちがいないのに。