原典でよむタゴール(岩波現代全書)

ノーベル賞作家ラビンドラナート・タゴールさんが亡くなってもう78年にもなるが、今拝見しても古くないというか、今こそ日本人が読むべき日本人論(みたいなの)がストレートに響く。右傾化する政府こそ国民の敵だ。

(わたしは、彼の詩が嫌いでは無いが苦手なんだけど、それは宗教色の問題だとおもう、たぶん。)わたしにとってのタゴールさんは慧眼を備えた文明批評家、かな。英国植民地インドに生まれた彼の存在は、どこか、大昔のゴータマ・シッダルタ生誕に相似た必然と意義があるように見える。

 

日本の三行詩(俳句をさす)では言葉だけでなく思想も抑制されていて、そこに日本の深さがあると指摘している。魂の節制とも。かれの知る戦前の日本にはその魂に呼応したくらしがあったのだ。なのに、国家なるものが肥大する欲望と結びついて、西洋を模し、他国を脅かすことに猛進してしまう愚かな歴史が始まった。そしてかれは(自衛権を否定はしなかったが、その先に進むことを批判し)以降日本を訪れることが無かった。(彼が知るのは満州事変突入あたりまで。)

我が国の歴史において、ほんの一時的なブームとはいえ、かれに熱狂した時代があったことを過去の出来事で終わらせてしまったままでいいのか。令和こそタゴールさんの言葉と思想に耳を傾けたい。

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