古典新訳がつぎつぎと日本で産み出されている理由が、なるほど、だった。
日本語の歴史は長いが近代文芸としての日本語の歴史はわずか150年。明治から今日までのことばの移り変わりがこれほどめまぐるしい国はそうあるまい、ってことらしい。
例えば
シェイクスピア『ハムレット』の現代訳のひとつ「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」が
昭和初期には「世に在る、世に在らぬ、それが疑問ぢゃ」(坪内逍遥訳、昭和8年)、
さらに遡ると「ながらふべきか但し又 ながらふに非るか 爰が思案のしどころぞ」(矢田部良吉訳、明治15年)。
こういう読み比べは、なかなかおもしろい。