擬 MODOKI: 「世」あるいは別様の可能性

博覧強記そのものの編集人・松岡正剛が仕事を通して感じてきた本音をありのままに綴ろうと苦心惨憺している本。率直であろうとするあまり、却ってカタカナ語が多用され、「 」で括った語句が溢れ、ややうんざりする。西洋・東洋の古典・宗教書・哲学書から現代のそれまで何を語らしてもその道のプロと互角に渡り合えそうな御仁が一介の読者のために理路整然と説明しているのだが、そんな志向がそもそも氏の対峙したい世界なんじゃないの、とつぶやいてしまうのだった。

 

それでも最後のほうに至って、貸し借りの文明論について資本主義の不合理なんかに触れているところは、わたしが昨年読んだ『負債論』の断片として興味深い。知の巨人たちは皆そこに行き着くのかなあと思わずにはいられない。

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