2017.10.17 旧(読書)junyo 埴原一亟 古本小説集 戦中戦後の庶民生活の哀感を、自身の体験をベースに描いた作家、埴原一亟。 ほんと、知る人ぞ知るって感じ。 樺太からの引き揚げ者の物語にしても、戦後すぐの食料統制のありさまにしても、当時の市井の人間模様がやわらかな重みを持っている。ただ、亡くなる前に準備していた遺書によると、来世を信じないかれは、死んだら無になると確信していたらしく、「生きているうちが花」的な空気感が小説にただよっている。 それって、絶望から開放される面もあろうが、虚しさから逃れられない側面も同居しているということだろう。 FacebookXHatenaPocketCopy