【続】kotoba ベートーヴェン 2020 Autumn Issue No.41 #会話帳改竄事件 #プレイリスト

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 ベートーヴェン肖像画としては、懇意だったヴィリボード・ヨーゼフ・メーラーの絵が本人に最も似ているらしい。それはそれ、素人が抱く人物像はさておき、著名な現代音楽家たちが彼をどう観ているのか、それぞれ個性的な視点があって実に面白い。坂本龍一さんは(研究家・小沼純一さんとの対談で)「他に例を見ない音楽の力というか推進力」と称えつつ、楽曲によっては「ドン臭い」ところがあるなどと手厳しい評もしていて、絶対礼賛でないから却って実直な敬意を感じられる。さらにピリオド楽器(作曲当時の楽器のことをそういうらしい)で演奏している現代盤を聴いた感想として「それほど嫌いじゃない」と言って、時代による楽器の違いを考慮した演奏法の必要性を説いている。(さすがだなあ。)
ライターのかげはら史帆さんの論考では、聾者となった大作曲家の研究が今なお途次にあることを教えてくれる。その要因の一つが「会話帳」(筆談ノート)の刊行・研究なのだが、管理していた秘書による改竄発覚事件だ。つまり神格化しようと策を弄したために真実が見えにくくなった。文書に絶対の信頼を寄せられないとなると、どこが改竄で、どこがそうでないのかの見極めが難儀なのだ。あああ。それだけ偉大な人物だったことだけは確かなんだねえ。
あと附録的に愉しいのはテーマ別のCD案内。

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音楽ライター原典子さんが「一日のはじまりに」とか「部屋の掃除をしながら」「困難に立ち向かう勇気が欲しいときに」「友と語らう昼下がりに」「恋心が募るときに」など15パターンに分けてそれぞれ数点のCDを解説付きで紹介してくれている。このプレイリストはWEBでも公開していてSpotifyApple Musicで聞ける。45曲7時間30分。親切。

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