「料理人が青空を握る。」ではじまる表題作「幻の家」(昭和7年)は、改作改題のあとが見てとれるように、もとの詩「死の髭」(昭和6年)と並べて配してある。死を注視する姿勢は変わらないながら、主役の座は、「死」から「幻の家」に移り、「この家は遠い世界の遠い思い出へと華麗な道が続いている。」と結ばれる。彼女の心境の変化を想像する好奇心と相俟って、読者としてはちょっと救われるかなあ。
まあ、作品を作者と切り離して味わうのが正道とするなら、これは邪道かもしれないけれど、この娘のあまりに短い人生を知ってしまったら、詩を通して彼女そのひとの核心に迫りたくなってしまうのは仕方ない気がする。