残(のこん)の月 大道寺将司句集

大道寺将司を知ってから読んでいるせいか、すこぶる空気が重いわ。古典的な言葉遣いがふんだんだから重厚というだけではない。文字通りの花鳥風月を題材にした句が多い、といえば確かにそうなんだけれど、基本的に当人以外の人間存在が感じられない孤地獄の感じがにじむ。これって先入観によるとも言い切れないと思う。句集としては、一句一句読ませる力があるので飽きることはないが、時折ドキッとする。たとえば、

息の緒を奪ひてしるき烏瓜

 

注釈によれば、*息の緒=命。*しるき=著しい、はっきりしている。*烏瓜=夏にレースのような白い花が咲き、晩秋に真っ赤な実に熟すウリ科の多年草

 

最初、わたしは「息の根を」と読みそうな自分に戦慄しちゃった。(息の緒、と声に出してもそうならないのは不思議だ、わたしの場合だけ?)ことばとしては残虐な要素を含んでいるが、淡々と表明している態度には沈痛な情念こそ潜んでいるようだ。

 

そんな中でわたしの心に比較的おだやかに残る句。

芋虫の無骨なれどもいくぢあり

水掻きがあればと思ふむじなかな

差し入れの文字鮮やかに寒見舞

 

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