櫛挽道守(くしひきちもり)

著者のおなまえを昇(のぼり)と読むと知ってから気になっていた作家。本格的時代小説を書いている。2013年刊行。

時代の空気がにおいたつような文章が光る。

書き出しがまた美しい。

↓↓

歩を進めると、足下の雪が鳴いた。登瀬は、音に耳を添わせて数を唱えはじめる。

ひい、ふう、みい、よう、いつ、むう。

つぶやく声が、等しい間合いをとって足音に重なっていく。右手に手桶を抱え、前のめりに進むうち、山際から朝日が顔を出した。白一色に塗り込められた村の景色が、途端に息づいていく。

 

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